独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)太陽光発電工学研究センター【研究センター長 仁木 栄】太陽電池モジュール信頼性評価連携研究体増田 淳 連携研究体長、原 浩二郎 主任研究員は、サスティナブル・テクノロジー株式会社【代表取締役 緒方 四郎】(以下「STi社」という)と、酸化チタン系の複合金属化合物薄膜をガラス基板にコーティングして、Potential-Induced Degradation (PID)現象による結晶シリコン太陽電池の出力低下を抑制する技術を開発した。
再生可能エネルギーによる電力の固定価格買取制度の開始により、日本国内でもメガソーラーなどの太陽光発電システムの導入が急速に拡大している。そのような中、近年、海外のメガソーラーでは、PID現象と呼ばれる太陽電池モジュール・システムの出力が大幅に低下する現象が報告されている。
この現象は、長期間での経年劣化とは異なり、数ヶ月から数年の比較的短期間でも起こりうるとされている。太陽光発電システムの長期信頼性を向上させ、導入を拡大するため、PID現象のメカニズムを解明すると共に、低コストでのPID対策技術を開発することが求められている。
標準型モジュールと対策済みモジュールは、それぞれPID試験前後の特性を評価した。
下図に、PID試験前後の疑似太陽光照射下での電流電圧特性を示す(試験条件は、-1000 V、85℃、2時間)。薄膜をコーティングしていない標準型モジュールの変換効率は、PID試験後は15.9%から0.6%へと大幅に低下した。これに対して、酸化チタン系複合金属化合物薄膜をコーティングしたガラス基板を用いた対策済みモジュールでは、PID試験による効率の低下は大幅に抑えられていた。
PIDの主な原因とされているガラスからのナトリウムイオン等の拡散が、今回用いた酸化チタン系複合金属化合物薄膜によりブロックされたため、PID現象による出力低下が抑えられたと考えられる。